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【感想】沈黙のパレード  成長したガリレオが挑む新たな事件とは ネタバレあり

 【2019/1/16追記】

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沈黙のパレード

著:東野圭吾

 

新・作・発・売

あのガリレオの新しい姿。何を見せてくれるのかとタイトルからもいろいろな想像が止まらない。

今回は、どうやって殺害したガリレオシリーズの科学的観点のハウダニットの側面よりも、心理的部分でのホワイトダニットやフーダニットの側面が色強く表れている。

ガリレオシリーズの中の長編でも非常に読みやすく、二転三転する物語にページを進める手が止まらない。

 

 

あらすじ

 

容疑者は彼女を愛したふつうの人々。
哀しき復讐者たちの渾身のトリックが、湯川、草薙、内海薫の前に立ちはだかる。

突然行方不明になった町の人気娘・佐織が、数年後に遺体となって発見された。
容疑者はかつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。
だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。
さらにその男が、堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を「憎悪と義憤」の空気が覆う。

かつて、佐織が町中を熱狂させた秋祭りの季節がやってきた。
パレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたか。
殺害方法は?アリバイトリックは?
超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。

 

文藝春秋BOOKS 沈黙のパレード 著:東野圭吾

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163908717

 

作品自体を知ったのは、福山雅治が演じたドラマ版「ガリレオ」で知り、そこから原作東野圭吾が描くガリレオシリーズにのめり込んでいった。

 

禁断の魔術の「猛射つ(うつ)」の短編を長編モノに変更した作品から3年、完全新規で計算すると8年の月日が流れている。僕が初めてガリレオに触れたのが中学生だから、かなりの年月が過ぎている。それは登場人物のガリレオこと湯川、学生からの旧友の草薙やドラマからの逆輸入の内海も時代の流れで変化している部分が作中からでも読み取れる。

 

湯川はアメリカでの研究を経て、准教授から教授になっており、また白髪が混じりはじめるようになってきた。そして何より、性格が丸くなった。ある事件をきっかけに、あまり警察の事件に関わらないようにしていたのが、進んで協力したり、周りに興味を示し、以前の実験一辺倒の人間ではなく、どこか丸くなったと作中でも言及されている。

 

草薙は警視庁での経験を重ね、今では警視庁捜査一課の係長にまで登り詰めている。

 

内海は観察眼が鋭く、調査対象からの印象は「美人だけど、目つきが鋭い」印象は変わらず。

 

また草薙らの上司の間宮は管理官に昇格し、多々良は理事官に昇格している。

 

僕はドラマ版で入ったためか、湯川学は福山雅治、草薙俊平は北村一輝、内海薫は柴咲コウ、間宮はモロ師岡、多々良は永島敏行で想像がしやすい。どこか映像化を意識したような、そんな感触を持った。

沈黙のパレード

沈黙のパレード

 

 

ここから物語の核心に触れる部分がありますので、ご注意ください。

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は、登場人物が入り乱れ、特に沢内幸江が登場してから、脳内メモだけでは、把握しきれなくなり、同一人物でも、苗字が変わったりするため、人物を整理し、読み進めた。

 

今作の登場人物

 

①並木祐太郎

定食「なみきや」の主人。

 

②並木真智子

祐太郎の妻、「なみきや」を切り盛りする。

 

③並木佐織

祐太郎と真智子の娘。3年前に何者かに殺害される。歌手の卵として嘱望されていた。

 

④並木夏美

佐織の妹。現在大学二年生で、「なみきや」を手伝う。

 

⑤新倉直紀

歌手を育てる実業家。亡くなった詩織をダイヤの原石として育成していた。

 

⑥新倉留美

直紀の妻。以前は直紀の教え子として、歌手を希望していた。現在は、直紀のサポート

 

⑦戸島修作

並木祐太郎の小学生時代の旧友。食材加工業の社長。冷凍食品が主力。

 

⑧高垣智也

3年前に亡くなった佐織の彼氏。今でも「なみきや」と付き合いがある。

 

⑨宮沢摩耶

大型書店「宮沢書店」の跡継ぎ娘。パレードの実行委員長。30代前半。

 

⑩蓮沼寛一

23年前、9年前に殺人の容疑で、逮捕されるも、「黙秘権」を行使し、無罪となる。

 

⑪増村栄治

蓮沼の元同僚。4年前に傷害致死事件で逮捕されている。3畳弱を蓮沼と共同で生活。

 

⑫本橋優奈

23年前に殺害された。当時12歳。

 

⑬本橋誠二

優奈の父親。会社の経営者。6年前に食道がんにて亡くなる。優奈の事件後は暗く過ごす。

 

⑭本橋由美子(旧姓:藤原)

優奈の母親。事件をきっかけに、ビルから飛び降り、自殺。夫の誠二とは職場で知り合う。

 

⑮沢内幸江(旧姓:本橋)

草薙らが23年前の事件を再調査する際、訪れる。本橋誠二の実の妹。

 

時系列

 

当時親の再婚相手の藤沢性を名乗らず、異母関係の9歳年下の妹、後の本橋由美子と兄弟関係にあり、妹の生活を支援するため、身を粉にして働く。そんなある日増村栄治が傷害事件を起こす。

本橋由美子が会社で本橋誠二と知り合い、結婚する。増村栄治が出所後に、増村は由美子のために縁を切る。だが、秘密裏にやり取りや娘の優奈に会う。

23年前に蓮沼寛一が本橋優奈を殺害し、(当時は行方不明状態)優奈の行方不明後に、由美子が自殺。増村栄治は中身のない日々を過ごす。

本橋優奈の遺体が見つかる。蓮沼寛一が逮捕されるも、黙秘権により、無罪

増村栄治が復讐を企てるも、中々尻尾がつかめない。四年前に、蓮沼寛一と接触

しかし、その後一年もしない内に並木佐織を殺害した事件により、姿をくらます。

実は並木佐織を殺害した人物は新倉留美。歌手を辞めたいと佐織から言われ、突発的に押し倒し、殺害した。突然のことに動揺し、逃走。そして、再び現場に戻るも、佐織の遺体が見つからない

(新倉留美観視点)

半年前蓮沼晃一の母の家から母の遺体とその下に埋められていた並木佐織の遺体が発見される。この時に、新倉留美は遺体を隠した人が、蓮沼晃一と知る。

そして蓮沼晃一の新島留美への脅迫が開始する

一年前から蓮沼寛一から、公衆電話にて連絡がある。そして、部屋に置いてくれないかと増村栄治に頼み込み、復讐者の増村栄治と蓮沼晃一の共同生活が始まる。寝ている際に殺害を企てるも、寸前のところで、復讐者は自分の他にもいるということに気づき、並木祐太郎に接触。

「なみきや」に蓮沼晃一が訪れる

並木佑太郎が旧友の戸島修作に蓮沼晃一のなぜ殺したのかの真相の追求と復讐ついて話す。戸島修作が密室に液体窒素を注入し、殺害または懲らしめるトリックを計画する。

戸島修作が協力者を募る。佐織の彼氏であった高垣智也、歌手デビューに尽力していた新倉直紀、パレード実行委員会の宮沢摩耶に協力してもらう。ここでは、一部の戸島、新倉、増村計画の全貌を知らず、他は自分の役割しか知らない。

この時点で、並木佑太郎は殺すか殺さないかを検討。

新倉留美が夫の直紀から、増村栄治の殺害計画を伝えられる。新倉留美が佐織を殺害し、現在脅迫されていることを話す。

そのため、新倉は自身の手で、真相を聞き出す並木の計画を阻止し、自分が殺害を企てる計画を練る。

パレード当日、並木裕太郎が食中毒もどきのトラブル(新倉が仕込んだ)により、新倉直紀の手により蓮沼晃一をトリックにて殺害する。

警察の捜査が開始

戸島によるヘリウムボンベの偽証トリックが見破られる

増村の正体が明かされ、高垣智也が自供する

3日後、並木祐太郎に任意同行のため、刑事らが訪れる。同時期に新倉夫妻に任意同行

湯川が新倉夫妻も知らない真実を伝えにいく。

新倉留美へ佐織を致命傷にしらしめたのは蓮沼晃一ではないかという推理を伝える。

(黒太字は事件の核となる最後に語られた出来事)

 

時系列としてはこのような流れだろう。実際の読者視点だともっとぐちゃぐちゃな並び替えになっている。加えて、最後の真実である新倉留美が並木佐織が殺害に関与していた点が今までの出来事を覆すあたりが、ミステリーらしさを感じる。

ただ、科学的トリックがやけにあっさりしており、個人的には新たな科学的アプローチによるトリックが見たかったという気持ちもある。

 

新倉夫妻が音楽を背景に進行する場面では、実際に音楽を流すとより一層物語に入り込めたので、是非作中の場面に遭遇したら、おすすめしたい。

(Amazon Primeで聞けます)

 

 

 

 

湯川が石神の献身の出来事を新倉留美に話した部分はこの設定をここで持ってくるのかとめちゃくちゃにこころをくすぐられ、罪滅ぼしではないが、湯川の中でも重要な出来事だったことが感じ取れる。

 

東野圭吾『容疑者Xの献身』特設サイト|文藝春秋

 

また本橋優奈や並木佐織に関わる方の辛辣な過去を救おうと行動する草薙のため、自ら事件に飛び込み、救おうとする姿に変化した「湯川学」を感じた。

 

この事件では、過去を受け入れる沈黙、保身のための沈黙、相手を守る沈黙。これは「沈黙のパレード」の意味の一つだと考えている。

だが、どんな形であれ、皆が沈黙を破った。

事件後にも「なみきや」を再開した並木家、「なみきや」に訪れた高垣智也が過去を受け入れ、前に進む姿こそがこの作品においての「沈黙のパレード」のもう一つの意味なのかもしれない。

 

強く印象に残ったセリフとして湯川が内海薫に言った

 「大抵の場合、実験の結果がどうなるかは学生たちもわかっている。だから彼等は、好ましい結果が出るように作業を行う。時には計測器の目盛りを多めに読んだり、少なめに読んだりしながらね。それで狙いに近い結果が得られたから、満足してしまい、自分たちが根本的なミスを犯していたことに気づかなかったりする。正しく実験が行われたかどうかを判断するには、どんな結果が出るかなんて、知らないほうがいいんだ。それと同様、パズルのピースの正体も明かさないほうがいいと僕は判断した。答えに客観性を持たせたかったというのは、そういうことだ」

沈黙のパレード 著:東野圭吾 文藝春秋 2018年10/10出版 270頁

捜査や仕事におけるストーリー作りや先入観にとらわれ、客観性が欠如したりすることを思い出させてくれた。作中でも2番目に気に入っているシーンだ。

 

一番は、最後のページの菊野から去る湯川のシーンで脊髄反射で脳内BGMがドラマ版ガリレオ「ガリレオ~知覚と快楽の螺旋~」を流れ、最後にやっとしてしまう気持ちのいい読書後だ。

 

 

途中湯川が内海と飲んでいたバーで飲んでいたアードベッグにも意味があったんですね。

アードベッグのソーダ割りが飲みたくなる・・・

アードベッグはガリレオ由来なんですね。知らなかった・・・

 

www.bokuto10.com

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