今(2018年)、日本の人口は何人か知っていますか。
答えは、約1億2650万人。15~64歳で労働ができ、生産活動の核となる人たち労働を行う生産年齢人口は、約7558万人。総人口の約60%が働いている構図だ。
もし、その構図が働かない人が99%で、世界が今まで以上の質で成り立っていたら?未来のあるかもしれないお話。
それが今作のSF小説『未来職安』だ。
(2018年6/1時点)
統計局ホームページ/人口推計(平成30年(2018年)6月確定値,平成30年(2018年)11月概算値) (2018年11月20日公表)
平成よりちょっと先の未来、国民は99%の働かない<消費者>と、働く1%のエリート<生産者>に分類されている。労働の必要はない時代だけど、仕事を斡旋する職安の需要は健在。いろんな事情を抱えた消費者が、今日も仕事を求めて職安にやってくる。斬新だけどほっこり、近未来型お仕事小説の登場!
僕らの代わりの素敵なAIとロボット
この小説では、今あるほとんどの仕事やサービスが人間以外のAIやロボットが働くおかげで、働かないで良い世界。
例えば、食事のデリバリーサービスやAmazonをはじめとしたネットショッピング。現在は、車やバイクでの配達。先進的であってもドローン。
この作品では『鳥型のロボット』。
今の時代のAmazonお急ぎ便ですら、朝注文したら、夕方に届くという異様な速さ。
未来は、ネットで注文→数分後にお弁当や商品が届く。もちろんキャッシュレス。
未来の速さは、もう次元が違う。
車はAIが管理する無人車両。
音声反応で指定した場所に到着する。加えて、車内環境を自動でその人にとって最適な環境を提供。未来人からしたら、『車を運転する』ということがありえない。
なぜなら授業の中で「人が車を運転していたころは、・・・」という、まるで僕らから見た旧時代なのだから。
警察も人ではなく、ロボット。
通称『K-bean』。表紙のひょうたんのような警察柄が入った可愛いロボット。実力行使の場面はないが、『K-bean』君を見て逃げるシーンからして、めちゃくちゃ強いはず。
他にも、料理人など多くの職がAIやロボットによって世界が回っている。
じゃあ、人々はどうやって生活していけばいいのか
いわゆる生活保護を超発展させた『生活基本金』が国から支給される。
今の世界の常識だと、全員が税金は払わなければならないもの。
この未来の常識では、生活基本金は全員が貰えるもの。
だから、未来の人は皆、負い目を感じず、健康で文化的に生きている。
ただ、みんな同じが嫌なのは、未来も同じであって、様々な問題があったりする。
そのためにお金を得るためや仕事というステータスが欲しかったり、未来のSNSで自分をよく見せたかったりと。その辺り、承認欲求を満たしたいのは、大きく変化していない。
むしろ肥大化しているかもしれない。
そんな1%のための未来の職業安定所
未来の1%の職業って何だと思いますか。
ピンと浮かぶのは、AIやロボットにはできない専門知識や技能を持ったエリート。
僕もそう思った。もちろん、この未来にもいる。
だが、こちらの未来職安では、未来の発展しすぎた世界だからこそ、人にしかできない仕事があると考えています。
未来職安で働く主人公の目黒奈津
スーツを華麗に着こなす上司の大塚
自由気ままな未来職安の所長
トリオによる、あるかもしれない未来の物語。
2018年12/8現在、双葉書店のサイトにて、無料で本書の1章と3章を読むことができます。少し先の未来を体験できます。
最後に
文体とSFの世界観がめちゃくちゃ好きでした。
少し気になってた「横浜駅SF」書いてる作者だったことが判明。
明日あたり届くので、楽しみ。
改築工事を繰り返す“横浜駅”が、ついに自己増殖を開始。それから数百年―JR北日本・JR福岡2社が独自技術で防衛戦を続けるものの、日本は本州の99%が横浜駅化した。脳に埋め込まれたSuikaで人間が管理されるエキナカ社会。その外側で暮らす非Suika住民のヒロトは、駅への反逆で追放された男から『18きっぷ』と、ある使命を託された。はたして、横浜駅には何があるのか。人類の未来を懸けた、横浜駅構内5日間400キロの旅がはじまる―。
ネタバレを極力なくして、本編の魅力を伝えるのが一番難しい。
同様に悩んだ作品も良ければ。