【感想】4話 妖刀の巻 TVアニメ『どろろ』 雨と悲しみの鶴の二重奏

雨宿りをするどろろとは対照に、どこか雨を感じている百鬼丸。

顔の皮膚と感覚を取り戻した、はじめての雨粒なのだろうか。

同じ場所で、戦に行った兄が戻るようにと祈る行商人のお須志。

突然、百鬼丸は赤い炎の悪意を感じる。

眼前にあったものは切り捨てられた人々だった。

 

百鬼丸を同じ修羅の力を持つと言った田之助。

原作にも登場しているキャラクターで、原作よりなタッチ。

今回の鬼神は刀そのもの。

百鬼丸視点では刀のみがどす黒い赤い炎の色をしていた。

田乃介自身は純粋で透明な炎の色をしていた。

田之助が自らの罪に耐えきれず、少しでも早く死にたいという純粋な願いのように思える。

 

(注)百鬼丸や琵琶丸の目が見えない故に見えるものを魂の炎の色と今作では、説明されています。詳細は以下の記事にありますので参考に。

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第5話もこちらに

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 目次

 

田之助とお須子

鬼神「似蛭」は生物の蛭と同じように血を好む。

それは田之助がかつて斬首刑の執行人になり、多くの人を切り捨てるようになったことからも伺える。

 

そんな田之助にも妹の行商人・お須子がいる。

どろろとの戦闘で一時的に妖刀と離れた田之介。

離れ離れだった兄弟は再会をした。

しかし田之介が「似蛭」と長くいたのか、それとも自分の中に罪悪感があるのか、心はどこか遠くに。

 

田之介が戦に行く前までは、よく好んで食べた栗ご飯。思い出を話しても、妹のお須子の気持ちはもう届かない。

妹への気持ちを込めた折り鶴だけが置かれる。まるで人の気持ちをも置いたように、お須志から身も心も離れる田之助。

妖刀の巻

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互いを思う二人

「似蛭」を持ってしまったどろろは、自らの意志に反して人を斬ろうとする。

 

田之助も最初は暴君の命令に背いていた。しかし、切らなければならない状況の闇に心をも飲み込まれたら、後は妖刀を受け入れるのみだ。妖刀に堕ちた原因の一つに戦国乱世を迎える時代の闇があったことがちらりと映り込む。

 

どろろの斬りたくないという感情が「似蛭」の力を抑える。

田之助の状況と違えど、どろろの意志の強さが対比する。

 

そんなどろろを助ける百鬼丸。無意識のうちに互いを思いやる。

おい!で呼ぶのではなく、「ありがとな、百鬼丸。アニキ…」と呼ぶどろろ。百鬼丸はアニキと呼ぶどろろの声は聞こえない。そうだとしてもどろろは百鬼丸に感謝を伝えたかった。

 

一話での荒い助け方ではなく、倒れるどろろを優しく受け止める。

声がなくとも、互いを思いやり意思を交わせたことが、エモーショナルさを強くぶつけてくる。

 

 

   

初めて知る音

妖刀を持った田之助を義手の左腕で受け、そのまま左腕の仕込み刀で一閃する百鬼丸。

お須子の田之助を切らないで欲しいという願いは百鬼丸には聞こえない。

鬼神「似蛭」を倒して、取り戻した両耳という聴覚。

百鬼丸がはじめて聞いた音は、悲しみに変わってしまったお須子のむせび泣く声と洗い流す雨の音だった。

 

聞こえないのに意思を交わせたどろろと百鬼丸。反対に聞こえていたのに意志が交わらなかったお須子と田之助が鏡のようにも見える。

 

仮に百鬼丸が聞こえていたのなら、彼は思い悩むだろう。

しかし、最後には切るはずだ。

田之助が死ぬことを望み、妹のお須子にこれ以上つらい思いをさせたくないという意思を汲み取るためにも。

 

死ぬ間際、田之助は一瞬笑みを浮かべる。

田之助が最後に目にしたのは、鬼神に乗っ取られても、大切に思っていた妹のお須子であったから。

そして、切った相手を憎まないで、未来に生きて欲しいという願いを伝えたようにも感じた。本当に妹思いだった。

 

悲しみの雨は止むのか

二人が意思を交えることは生前には出来なかった。

しかし、かつて自分が泣き止んだときに折ってくれた鶴が、雨がやんだお堂に鶴が二羽仲良く、太陽に照らされていた。

ここでやっと田之助とお須子は本当の意味で再開が果たせたように思える。

 

ここでいう再開は、お須子も後を追って命を無くしたことではないと思う。(後追い自殺したとも見えます。解釈の一つをとしては有り得なくはないと思います。)

 

ただ、兄の命を賭けてまで、妹を巻き込みたくなかった思いを無駄にするほど彼女は弱くないはずだ。彼女なら兄の思いも受け入れ未来に生きるはずだ。

 

何より家がなくなり、行商人として生きるお須子の道に希望のように光が指して欲しい。

 

 

第五話「守り子唄の巻・上」予告

初の前編・後編。
百鬼丸は何を聞くのか。
次こそ、百鬼丸に希望を与える身体の取り戻し方を願うばかり。