【感想】鎧武を再構築し、変身する舞台 『仮面ライダー斬月』 -鎧武外伝- レポ

2020年6月14日更新しました。

約6年の時を経て、再び誰もが運命の荒波と戦い、未来を掴むライダー戦国舞台の幕が上がる。めちゃくちゃ面白かった。リアル呉島貴虎さん足長いし、なんだあのスタイル良すぎな人。目の前での殺陣や随所の表現に心が奪われる。大塚芳忠さんの本編同様のナレーションも「鎧武はじまった…!」という引き込みも良かった。

 

舞台『仮面ライダー斬月』は、呉島貴虎が主役となり、本編で明かされなかった8年前の出来事に決着をつけるため、異国で若者や大人、悪意が絡み合う中で戦う物語だ。

オリジナルキャストは呉島貴虎役の久保田悠来さんだけだが、中身はまさしく仮面ライダー鎧武だった。本編のテーマやTVではできなかったことを舞台という空間を使い、めまぐるしく物語が進んでいく。

 

以下ネタバレなし感想です。

ネタバレありの感想は途中からその旨を明記しています。

仮面ライダーを舞台でやるとはどういうことなのか

舞台と聞くと、歌って踊るミュージカルやアニメが原作の「2.5次元舞台」を思い浮かべた。

仮面ライダーと聞くと、「変身」やスーツを着た特撮ヒーローという印象を思い浮かべる人が多いはず。

 

舞台好きからすると、仮面ライダーという舞台。

ライダー好きからすると、舞台版仮面ライダー。

という具合に、互いに見る目的が異なる。

 

こちらに紹介動画を

出典:YouTube 演劇総合情報サイト『エンタステージ』

 あらすじ

進む貧困と止まない紛争によって衰退の一途を辿ることとなったトルキア共和国。かつてそこは巨大企業ユグドラシル・コーポレーションによるプロジェクト・アークの実験場となっていた。すでに役目を終えたはずのその地で異変が起きているとの情報を得た呉島貴虎は、約8年ぶりにトルキア共和国に足を踏み入れるが、予期せぬ襲撃を受け、巨大な穴の底に広がる地下世界・アンダーグラウンドシティに落下してしまう。

 トルキア共和国で最も危険な場所、アンダーグラウンドシティ。多くの少年、青年が生き残るための殺し合いが行われていた。そして、そこでは戦極ドライバーにロックシードを装着し、アーマードライダーに変身した者たちもいた。血の流れる殺し合いの場にボロボロの姿で倒れこんだ貴虎は、落下の衝撃で記憶喪失となり、自分の名前すら思い出せない状態になっていた。チーム“オレンジ・ライド”のリーダー、アイムによって助けられる貴虎。

 だが同じ頃、貴虎の行動や抗争の様子を街中に仕掛けたカメラで監視し続ける男がいた。その男は、ある理由から貴虎に復讐を遂げようとしていた…。

出典:舞台『仮面ライダー斬月』 -鎧武外伝- | Nelke Planning / ネルケプランニング

 

舞台を知っている人や役の中の人(俳優)が好きな人は、舞台の大事な要素の一つとも言える顔の表情が隠された仮面の戦士や化物が出てくるのに驚きを感じるだろう。

僕自身、舞台を見たことはあるけれど、そんなに行くようなことはなかった。だからミュージカル形式に人が戦い踊る様子が新鮮だったし、もちろん目の前で仮面ライダー鎧武やバロンが踊るというのも中々にインパクトが強かった。

 

どちらかを知らない人にとって、互いのジャンルがはじめましてなのだ。

 

両者の良いところを上手く表現し、双方にとって非常に完成度の高いものとして作られ、互いの裾野を広げるきっかけにもなる作品になっている。

TVでは常に制作側が見せたい空間を切取り、見せたい部分を映像として見ることになる。反対に舞台では、観客が見る音や光の全てを使い空間を見せる。

変身時のアームズや斬撃の果実のエフェクトがプロジェクションマッピングで表現され、本編にも引けを取らない。

 

よく仮面ライダーでは、戦闘場所の切り替えに様々な手法が使われる。

近年の映像では、エグゼイドのゲームステージを生成するという表現を、CGで場面の切り替えを行ったりしていた。また敵を吹っ飛ばして、カメラ技術による場面の移動をする。

舞台では、音や光を使い、巧みに場面の転換をする。

 

毎公演大筋は同じといえど、表現者が人間ということもあり、表現も進化する。

僕は3/9の18時公演(ソワレ)で、後述になるがラストのあの表現はまさしく舞台でしか見れない素晴らしい演出だった。

仮面ライダーを舞台でやる、鎧武であったことも正解だった。

 

驚いたのが、観客の男女比が、2:8だ。めちゃくちゃ女性陣が多かった。仮面ライダーが目当てなのか、舞台が目当てなのかは定かでないが…

まだ見に行ってない人は見て欲しい。当日券の発券はもちろん、Twitterでも探せばチケットは見つかるので是非とも。また3/31日にライブビューイングも行われます。

ライブビューイング 舞台『仮面ライダー斬月』 -鎧武外伝-

 

そんな舞台『仮面ライダー斬月』 -鎧武外伝-を仮面ライダーという観点から、舞台で表現したことをネタバレありでこれ以降書きますので、ご注意ください。

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目次

 

 

かつて世界を救った葛葉紘汰のように、呉島貴虎も心を「変身」させた。

本舞台は仮面ライダー鎧武のリメイクと言っても過言ではないほどに、随所にそしてテーマに色が強く表れている。また鎧武やバロン、龍玄をはじめとした変身者は異なる。だがその変身者に本編の登場人物の要素が乗り移っているかのよう。

そのため主要な登場人物や時系列を先に整理し、その後に感想を書いていきます。それほどに鎧武要素が濃かった。

物語の大枠はこちらのfusetterを参考に、綺麗にまとまっています。

@ryu_gunplaさんの伏せ字ツイート | fusetter(ふせったー)

 

主要登場人物

呉島貴虎(演:久保田悠来)

ユグドラシル解体後の後処理をするため各国を飛び回る本舞台の主人公。

本編での沢芽市を焼き尽くすスカラーシステム及び戦極ドライバーの実験場となっていたトルキア共和国に不穏な動きがあったため、8年ぶりに訪れる。

本編のように思いもしない者から襲撃され、ユグドラシルの森ならぬアンダーグラウンドにたどり着く。加えて、記憶喪失。記憶喪失なのも、鎧武ファイナルステージで紘汰が記憶喪失になったオマージュ。

記憶喪失故に、名前を思い出せず周囲からおじさん呼ばわりされ、気にする主任は観客にめちゃくちゃウケてました。

 
アイム(演:萩谷慧悟)

トルキアの鎧武の変身者。紘汰の声にめちゃくちゃ似てます。

葛葉紘汰のように、自分よりも仲間を優先し、仲間を守るために、手を血に染めた経験もある。

オレンジ・ライドのチーム代理リーダー

リーダーはあるときから行方不明になる。

服装も紘汰に似ている。


グラシャ(演:増子敦貴)
トルキアのバロンの変身者。

駆紋戒斗のように強者理論。

実験場とされているアンダーグラウンドから抜け出し、支配している貴族をねじ伏せるため強さを求める。

バロック・レッドのリーダー

戒斗の髪型に赤いメッシュが入った見た目。


フォラス(演:宇野結也)

トルキアのグリドンの変身者。城乃内秀保、そして初瀬亮二の要素を兼ね備えた人物。

漁夫の利の策略と力を求める。本編の城乃内が凰蓮に真の意味で弟子入りしなかった世界線の人物のように思える。

グリーン・ドールズのリーダー。

ライオンみたいな金髪でオールバック。

 

雪叢・ベリアル・グランスタイン(演:小沼将太)

トルキアのブラーボの変身者。凰蓮同様雇われ傭兵かつおじさん…でなくおねえさん。

貴族から貴虎の暗殺を依頼される。

 

鎮宮雅仁(演:丘山晴己)

人類を救うためのプロジェクトアークに尽力していた人物の一人。貴虎と共に8年前にスカラーシステムの実験舞台や戦極ドライバーについて研究をしていた。貴虎同様、弟がいることや境遇が似ていることもあり、二人の仲は良好。もう一人の呉島貴虎。白スーツで足長いです。

8年前スカラーシステムの惨劇により命を落とす。実はオーバーロードとなり生きていた。

アーマードライダー斬月に変身できたのは、 後述の本編27話「真実を知るとき」のベルトを鎮宮雅仁が死んだ際に持っていたから。彼だけベルトの帯が黄色なのもそのため。メロンロックシードは持っていなかったため、貴虎のロックシードを使用。


鎮宮影正(演:原嶋元久)

上述の鎮宮雅仁の弟。龍玄の変身者。

兄が殺された理由に貴虎が関わっていると睨み、貴虎に罪を認めて殺そうとする。

後半のミッチのダークスーツを着た見た目。

叫ぶ演技が多いのですが、しっかり聞き取れて、心からの叫びのようで好き。

 

鎮宮鍵臣(演:大高洋夫)

 鎮宮家現当主で、上述兄弟の父親。当初ユグドラシル内部に呉島と鎮宮が二大派閥があった。その派閥争いに負けたものの、表面上は貴族の娯楽提供とし、秘密裏にある目的のためにアンダーグラウンドでの殺し合いゲームをさせる。

 

時系列

今作の出来事は、Vシネマ『仮面ライダーナックル』のその後を描いた『小説 仮面ライダー鎧武』以降の時系列の可能性が高い。貴虎が一人でユグドラシルの解体後の後処理をするために、海外で仕事をしていることが小説で明らかになっていることから。

少なくとも、最終回以降にメロンロックシードを貴虎が持っている状況から、『ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル』以降ということは確定。

 

8年前の出来事は本編とVシネマ『仮面ライダーデューク』の間の時間軸だ。

戦極凌馬が最初に開発したロックシードがリンゴロックシードということもあり、トルキア共和国にオレンジやバナナのロックシードがあることから本編とVシネマデュークの間の時系列ということが分かる。

(『小説 仮面ライダー鎧武』時系列を参照)

 

以上のことを整理すると

 

Vシネマ『仮面ライダーデューク』

↓ 

舞台での8年前の出来事

TV本編

MOVIE大戦フルスロットルやVシネマ『仮面ライダーナックル』

『小説 仮面ライダー鎧武』

舞台『仮面ライダー斬月』

 

小説 仮面ライダー鎧武 (講談社キャラクター文庫)

小説 仮面ライダー鎧武 (講談社キャラクター文庫)

 

 

 

「変身」した心 

記憶喪失となった貴虎は、沢芽市で起こった出来事と非常に似た状況を追体験します。そのことが観客にとって「仮面ライダー鎧武」の再体験でもあって。

沢芽市のビートライダーズのダンスは殺し合いに、利用する大人と子どもの争いは支配する貴族VSアンダーグラウンドシティのチームになっています。そして、物語の場所、人物も沢芽市とトルキア共和が鏡に似たものとして描かれている。

 

ただそれは追体験でなく、貴虎が過去を受け入れ、手を取り合って未来を掴み取る「変身」する物語だった。

 

本編での貴虎はヘルヘイムの侵略から人類を救うため、70億人の人口の1/7の10億人を救う犠牲ありきのプロジェクトアークに取り組んでいた。現実的な決断。オーバーロードというヘルヘイムを操る者が現れ、新たな道が見えた直後に、同僚の裏切り。そして貴虎の弟、呉島光実の裏切り。自分がやってきたことに責任を感じ、せめて光実に対してはケジメをつけようとするも、躊躇したことで海に落ち意識不明となる。

 

このアンダーグラウンドシティと同様の沢芽市の結末を知っている貴虎は、記憶を取り戻しながらかつての自分を振り返り、アンダーグラウンドシティのアイムに大切なことを教えていく。かつて紘汰から学んだ貴虎が、舞台ではアイムにそのことを教えているのがいいんですよね。

 

記憶を取り戻す中で、8年前にユグドラシルと協力関係にあったトルキア共和国でプロジェクトアークの準備を行っていた鎮宮雅仁。貴虎同様にノブレス・オブリージュ(高貴なるものに伴う義務)を持ち人類を救おうとしていた。言うなればもう一人の呉島貴虎。しかし、実験は失敗し、多くの住人がインベスとなり、スカラーシステムを起動させなければならない状況に陥った。

呉島貴虎が変身実験直後のボロボロの身体(本編27話「真実を知るとき」の回想が当時の8年前だと思われる)と、インベスがいる中でスカラーシステムを起動することが難しい状況の中、自らの意志で鎮宮雅仁が仮面ライダー斬月となりスカラーシステムを起動し、自身ごと火の海と化したのが8年前。

 

真実を知る時

真実を知る時

 

 

だが、鎮宮雅仁は焼き尽くされる火の中、父親の鎮宮鍵臣の考えのように支配する者とされる者で世界はできており、多くの人類を救うのではなく、支配することが彼にとってのノブレス・オブリージュだと考えた。

駆紋戒斗が人間からオーバーロードになったように、彼なりのノブレス・オブリージュの意志とインベスになる恐れがある実験段階中のドライバーによってオーバーロードとなった。そして、貴虎がトルキア共和国に訪れ、貴虎を殺す復讐の機会を待っていた。

もし、貴虎が鎮宮雅仁の代わりに死んでいたら、オーバーロードになっていたかもしれない。

 

ここで話を振り返る。貴虎と鎮宮雅仁に大きな違いがあり、

それは一人でなく、皆で協力し、成し遂げること。

貴虎は8年前と違い、様々な人と戦い、主義主張をぶつけてきた。そして、どちらかを選ばないといけない犠牲の上の平和をぶち壊し、真の意味で世界を救った男と出会い、影響を受けてきた。

いざ出陣!カチドキアームズ!
 

 

貴虎はトルキア共和国の出来事を含めた全ての過去を受け入れ、一人で背負い込むのではなく、周りと協力し、世界を救う。

アイムにアンダーグラウンドシティの住民で協力し、ただ生きるために貴族に反旗を翻すだけでないと諭した。貴虎はその先の明日を生きるために、トルキア共和国を再建するという未来の道を照らした。かつて葛葉紘汰に言われた「変身だよ! 貴虎、今の自分が許せないなら新しい自分に変わればいい」昔自分の前に光が指したように、アイムにとっての貴虎は葛葉紘汰だった。

誰かに光を指す姿はもうその心が「変身」していた。

運命の勝者

運命の勝者

 

 

カチドキと舞台ならではの演出

心の「変身」ができていたからこそ、舞台でのカチドキアームズが輝く。スカラーシステムの惨劇にあったトルキア共和国。その国を脅かすオーバーロードを倒す力が、かつてスカラーシステムを壊し、世界を救った男から授かったものというところが最高にエモさを感じます。

当初出てジンバーメロンかなぁぐらいにしか考えていなかったので、このトルキア共和国を救うにはこれしかない最適なアームズなんですよ。

さらに本編で斬月・真と鎧武カチドキアームズで戦い、新アームズお披露目の回なのにゲネシスで対抗する強さを今度はオーバーロードを相手にするのも踏襲しているよう。プロジェクションマッピングを使ってオーバーロードの波動攻撃や斬月の攻撃エフェクトもテレビ本編さながらの迫力があって。

 

(龍玄の鎮宮影正から託された試験型ドライバーだから、ベルトの帯が銀色。地味にスーツのライドウェアが斬月・真。)

鎮宮雅仁が変化したオーバーロードの姿は身体がレデュエで、肩は翼のように上に向いた新規?パーツがつき、顔はアーマーが装着されていない仮面ライダーマルス。

2020年6月14日に舞台版DVDを買って、再度確認したら顔はレデュエが真っ白でした。すみません!!!

全身が役の人が着ていた白のスーツのように真っ白。武器はレデュエやヨモツヘグリアームズの際に使用していた槍、槍も真っ白。(正式名称は杖でダウ。便宜上槍にします)

 

戦いも終盤に差し掛かり、互いの姿が人間に戻るんですが、これ実は変身解除してなくて、素顔だったらこんな表情をして戦っている表現なんじゃないかって。『仮面ライダークウガ』の最終戦のアルティメットフォームとン・ダグバ・ゼバの雪山の戦いの表現をしているように思いました。変身解除して、互いに総力を振り絞って戦う、実はまだ変身しているけれど、素顔はこういう表情で戦っている二つの見方ができる。

 

ここが舞台ならではというか、戦闘の途中にオーバーロードが持っている槍の刃先が折れかけるんですよ。それはみんな完全に折れないか心配しながら見ていて。

最後に素顔のスーツ同士で貴虎は斬月版火縄大橙DJ銃と無双セイバーを合体させた大剣モードを持ち、一方鎮宮雅仁が持つ槍と最後に思いという言葉をぶつけながら互いに攻撃してすれ違うシーンがあります。

そのトドメに近いすれ違いの一撃で槍が完全に折れるんですよ…!!!

心を「変身」した貴虎の思いが鎮宮雅仁の思いを折るように。これ鎧武とバロンの最終決戦の武器を折るシーンにも重なっていて…!

ここ本当泣きそうになりました。

 

アイム≒葛葉紘汰

アイムと紘汰がオマージュされている部分は多いのですが、決定的に違う部分があるんです。それは殺す相手を知っているかどうか。

テレビ本編で紘汰はビャッコインベスとなったリーダーの角居裕也を第一話で知らない状況で命を奪います。

舞台でのアイムは、記憶を取り戻しかけている貴虎からインベスの元は人間であり、オレンジ・ライドのチームリーダーが行方不明になった同時期に出現したインベスがリーダーということを知る。また変身に使用する戦極ドライバーが使い過ぎるとインベスになる可能性があるというリスクを知った。

その上でやむなく仲間を守るためにリーダーを殺します。

紘汰は後から殺した事実を知らされて絶望し、アイムは知った上で仲間を守るためにやむなく殺して絶望するんですよね。

 

紘汰はスカラーシステムを知ったときに事実を、アイムはスカラーシステムの実験場となった場所で事実を知って、どちらも運命に巻き込まれ、もがき苦しむ。でもその絶望を救ってくれたのは、両者ともにチームの仲間だった。アイムは加えて、貴虎からの助けもあった。

 

その後に、グリドンの変身者フォラスは試験型戦極ドライバーの副作用でインベスとなった。アイムはドライバーに頼らず、仲間を守り、明日という希望のためにフォラスの命を自ら奪うのが、前述のリーダーとの命の剝奪の違いなのかなと。これってもしかしたら、TV本編で紘汰にさせたかったことの一つなのかもしれないですね。

 

また、演者の方の声質がめちゃくちゃ紘汰に似ていて、驚きます。貴虎と会話するためにアイムの身体を借りて紘汰神と会話するシーンもアイムがリーダーの絶望を乗り越え、前に向かう心構えができてからなのも良い。このシーン鎧武を追ってきた人からすると映像もあいまって個人的に泣きそうになるポイント。

 

寄せた過ぎた故に、惜しかったグラシャ≠駆紋戒斗

グラシャは駆紋戒斗のように常に強さを求め、貴族からの支配から抜けようとしていた。インベスになってしまったフォラスを倒した後にトルキアでの再建を目指すために貴族への反抗を今までいがみ合っていたチームがアイムを中心に協力しようする。

そこにグラシャが駆紋戒斗のように、試験型ドライバーの危険があるにも関わらず、アーマードライダーとしてアイムと対立します。

 

もちろん、紘汰と戒斗の最終戦をオマージュしようとするのは分かります。

しかしここはトルキア共和国という似て非なるものなんですよ。

駆紋戒斗という男は、かつて弱者のときの痛みを知っているからこそ、弱者が虐げられない世界を作ろうとした。それは紘汰も認めていて、ただやり方が違っただけで。その信念と折れない心が戒斗の魅力だと思うんです。

グラシャはそこの描写が少なかった。強さを求めるのは分かる。そして貴族からの支配を抜け出し、今度は自分が支配する。その先に何をしたかったのか…そこが不透明故に、惜しかった。

 

だからこそ、最後にアンダーグラウンドシティのチームが協力する中の輪に、グラシャがいて欲しかった。

TV本編でダンスをしたいザックたちのために、ビートライダーズの印象を払拭する合同イベントに参加させるため自ら抜けた戒斗。そのイベントを邪魔する奴を追い払った戒斗がいたからこそ、グラシャには違う自由な未来を掴んで欲しかった。

さらばビートライダーズ

さらばビートライダーズ

 

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鎧武というステージ

この記事を書くに辺り、鎧武というテーマはなんなのか。今一度舞台とTV本編や小説を振り返り、考えてみた。

主義主張を争い、悩み、悪意と戦い、新たな道を見つけて進む。

これが鎧武最大のテーマだと考えています。本編はもちろん、舞台でも誰もが争い、悩み、主張のために戦っている。その関係性が見ていて心を掴まれる。

間違ってもいい。過去を受け入れて前に進もうという前向きなメッセージを感じられる。

もちろんこの舞台は、鎧武を見ていない人も多くいるだろう。約2時間の舞台でこのテーマを再構築したものが、脚本・演出:毛利亘宏さんやシリーズ原案・監修:虚淵玄さんらがやりたかったことなんだと思います。

爆弾突撃やブラーボの世間に向けての中継映像をはじめ鎧武ファンからするとオマージュしているネタが多かったのも事実。

仮面ライダーを舞台でやるという試みに関しては十分成功と言えると思います。また今後あるのなら、観劇したいです。エグゼイド辺りもやりやすそうです。

 

またジゴワットレポートさんでの記事で、鎧武の魅力について触れているのですが、確かに舞台でも、こだわること(生きること)を無理やり求められ、また求められた者たちの物語だったなと。詳しくは以下の記事に。

久々に鎧武の公式読本を読み返していたら、「鎧武の作品的な魅力とは?」の質問に諸田監督が「こだわりきれない若者がこだわらざるを得ないという世界観」と答えられていて、思わず膝を打った。まさにその通りというか、「こだわることを無理やり求められた者たち」のドラマでもあったなあ、と。

出典:「数年ぶりに観返したけどやっぱり『鎧武』ってめちゃくちゃ面白いな…」記事内のツイートから引用

www.jigowatt121.com

 

最後にアイムたちの姿を見て、トルキア共和国の再建の目途がたち、別れの挨拶をする貴虎の後ろ姿が最高にかっこいい。その後ろ姿に答えるよう、「トルキアのステージはこれからだ!」というアイムの声が聞こえてきそう。

 

舞台版の小説は舞台版の登場人物の別視点で語られるのでそちらもおすすめです。

 

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舞台「仮面ライダー斬月」‐鎧武外伝‐ [Blu-ray]

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