初代ウルトラマンやセブン、平成ウルトラマンやウルトラQをはじめとする本編の続編や作品の番外編を匂わせる作品たちに心が躍る。
各挿絵も物語に色をつけ、読者を引き込む。
知らない怪獣はGoogle先生が大抵は教えてくれることもあり、描写の手助けをしてくれる。
特に小説にしかできない表現や当時では無理だったことや僕らの妄想や想像の一部を補完する。
そこで7人の怪獣が生み出した作品を紹介する。
あらすじやネタバレなしの感想と併せて、登場関連作品も紹介する。
多々良島ふたたび
著者:山本弘
知っていると楽しめる関連作品
『ウルトラマン』
『ウルトラQ』
『?』
あらすじ&感想
初代ウルトラマンがレッドキングを倒した怪獣無法地帯第8話から、約半年後の物語。
怪獣無法地帯の舞台となった多々良島は、再調査を望む声と国の予算が資するため、批判の声は大きくなるばかり。
世間の同意を得るためにも、本編の怪獣無法地帯の事件で生き残った松井博士を中心とした国際学術調査隊が多々良島に足を踏み入れる。
そこで調査隊が見たものとは…
初っ端の引き込み作品としては、オタク心を「ほら、ウルトラ怪獣だぞ!!」とこれでもかと殴ってくる作品。
途中、ある怪獣を命名するシーンがあります。
人によってどっちと取るかは自由だし、にやりともする。
個人的には、関連作品の『?』の解釈のが好き。
宇宙からの贈り物
著者:北野勇作
関連作品
『ウルトラQ』
あらすじ&感想
電気から放射線に至るまで様々なエネルギーを吸収する謎のバルンガが存在する世界のお話。
演劇俳優をめざす少年が見る不可思議な夢が、なぜか最近現実世界にも介入してくる
これはバルンガのせいなのか。
バルンガ自体知らなかったんですが、 いるだけであらゆるエネルギーを吸い取るの化け物では。ウルトラマンマックスの完全生命体イフのような異質さ。
知らない怪獣を知れるのも良かった。
知らないジャンルを知れるのがアンソロジーの楽しさ。
マウンテンピーナッツ
著:小林泰三
関連作品
『ウルトラマンギンガ』
あらすじ&感想
希少生物の保護を目的とする過激派保護団体「マウンテンピーナッツ」とウルトラマンが対立する。怪獣を倒すことが正義なのか、怪獣を保護することが正義なのか。
互いの正義という価値観がぶつかる物語。
怪獣が人々を襲う中、ある声が…!
「ウルトライブ!」
マウンテンピーナッツは怪獣を保護する名目のため、ウルトラマンを攻撃する。
そして、ウルトラマンを倒せるほどの技術を彼らは持っている。
ウルトラマンギンガということもあり、他作品からも様々なキャラや怪獣、設定が出張してくる。
戦闘も小説ならではの技や戦闘シーンに読み進める手が止まらない。
ただ、ウルトラマンギンガのようなヒロイックなストーリーというよりも、ウルトラマンネクサスのようなダークなストーリー。
正義の反対にあるものは何なのか。
ウルトラマンとは何なのか。
影が来る
著:三津田信三
関連作品
『ウルトラQ』
あらすじ&感想
毎日新報で記者として働く江戸川由利子が日常に違和感を感じる。行ってもない場所で自分がいたり、友人や職場の人が話していないことを知っていたりするドッペルゲンガーの物語。
ホラーミステリー作家が描く怪獣や星人の魅力の一つ「怖さ」に焦点を当てた作品。
変身障害
著:藤崎慎吾
関連作品
『ウルトラセブン』
『ウルトラマンマックス』
あらすじ&感想
家族を持つ父として、東京スカイツリーが観光スポットになっている時間軸まで滞在しているモロボシダンことウルトラセブン。
ウルトラ警備隊として、セブンとして闘う男には最近悩みがあった。
変身ができない…!
精神的な問題と考え、モロボシダンが純和風な少し変わったメンタルクリニックに訪れる。
今アンソロジーでも、コメディ色が強い作品。
メンタルクリニックには、数々の人が訪れ、悩みをぶつけていく。
治療中に『あれ』が街を襲う。
戦闘シーンよりも、なぜ変身できないのかという原因を追及するウルトラ怪獣コント。
怪獣ルクスビグラの足型を取った男
著:田中啓文
関連作品
『ウルトラマン』
あらすじ&感想
怪獣専門書や「怪獣学」が発展する日本。
怪獣の足型を取ることを専門にした『怪獣類足型採取士』の男たちが幻の怪獣ルクスビクラを追いかける。
足型採取以外にも体重や高さ等分野は様々。
ちなみに足をどうやって採取するかというと、怪獣が踏むであろう道にコンクリートをぶちまけるのである。
怪獣関係の出版や研究に国から補助金を出している世界なので、特に問題もないのだろう。
怪獣大図鑑や仮面ライダーの超全集のような本が学術書としても発刊されている…!
痕の祀り
著:酉島伝法
関連作品
『昭和ウルトラマンシリーズ』
あらすじ
謎の怪獣たちが跋扈する世界での怪獣を倒した後の死骸を処理する特殊清掃業者『加賀特掃隊』の物語。
そもそもウルトラマンが怪獣を倒すけど、爆発四散した後の怪獣の破片はどうするのかということにスポットを当てた。
じゃあ誰が倒すのかと。
我らの…!しかいない。姿が違うものが10体もいる。
厄介なのは死体処理。
ただ、死体処理するだけではない。
死骸を処理する際に発せられる「絶対子」は、触れた人物のトラウマや罪を体験させ、最悪廃人のようになる可能性も物質の中、死体処理しなければならない極悪環境。
その死骸の断面の描写はまるでパシフィックリムの『KAIJU』のような気持ち悪さ。
トラウマ等の追体験させられる設定も、パシフィックリムのドラフトを思い出す。
(正直なところ、これが一番読みにくかった。冒頭が特に。ただ、ラストシーンのダブルミーニング感は意外と好き。)
ソフビ魂 パシフィック・リム ライジン 約200mm PVC製 塗装済み完成品フィギュア
- 出版社/メーカー: BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ)
- 発売日: 2018/02/24
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログを見る
パシフィック・リム: アップライジング(オリジナル・サウンドトラック)
- アーティスト: ロアン・バルフェ
- 出版社/メーカー: Milan Records
- 発売日: 2018/04/06
- メディア: MP3 ダウンロード
- この商品を含むブログを見る
最後に
特撮小説最大の強みは映像での予算や表現というハードルが取り払われること。
読者の脳内再現に任せ、ある意味で無限大の楽しみを提供してくれる。
ただ、楽しんだ後に「これ映像でも見てみたいなぁ…!」という気持ちが湧き上がる。
近いうちに今回の作品で一番好きな『マウンテンピーナッツ』のネタバレありの感想を書く予定です。
個人的には仮面ライダーのアンソロジー小説が出版してくれると嬉しい。
ディケイドが二期平成ライダーの世界を巡るお話や本編で説明出来なかったカブトの赤い靴の設定とか需要はあると思うんですよね。
今回は平成ウルトラマン少なかったので、次回は平成多めだと個人的には嬉しい。
平成ウルトラアンソロジーでないですかね。
では、次の小説世界でお会いしましょう。
多々良島ふたたび ウルトラ怪獣アンソロジー (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 山本弘,北野勇作,小林泰三,三津田信三,藤崎慎吾,田中啓文,酉島伝法,開田裕治
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2018/06/19
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る