久々にジャケ買いした本でしたが、正解でした。
紙媒体での本の帯が上手に使われ、帯がとても面白いです。
講談社が動画を出していたのでご覧ください。
叙述トリックーーそれは読者と世界を欺く禁断の果実。
— 講談社 文芸第三出版部 (@kodansha_novels) 2018年9月19日
その果実を貪った男、似鳥鶏。絵で叙述トリックを仕掛ける漫画家・石黒正数による天才的装画。
「この物語には叙述トリックが使われています」…って、それ、言っちゃっていいの!?『叙述トリック短編集』ついに発売!https://t.co/4KHJXzON8f pic.twitter.com/ikO2E5lBRt
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帯上
帯下
めっちゃ面白くないですか。帯だけで印象変わりますよね。実は裏側も同じように変化するのですが、お手に取って頂いて、楽しんでいただけたらなと!僕自身、周りに見せびらかしたり、果ては電車の中でブックカバーなしで読んで、ある程度時間経過したら、帯を移動させて、周囲の反応を楽しむ遊びをしていました...
叙述トリックと謳っている通り、全編で叙述トリックを用いてます。
というか最初に叙述トリックに対しての説明から始まります。なので初心者は叙述トリックってこんなのなんだ。知っている人からするとクドいほどしてきます。
よく「叙述トリックはアンフェアだ」と言われてしまいます。これが叙述トリックというものの泣きどころです。
では、アンフェアにならずに叙述トリックを書く方法はないのでしょうか?
答えはノーです。最初に「この短編集はすべての話に叙述トリックが入っています」と断る。そうすれば皆、注意して読みますし、後出しではなくなります。問題は「それで本当に読者を騙せるのか?」という点です。最初に「叙述トリックが入っています」と断ってしまったら、それ自体がすでに大胆なネタバレであり、読者は簡単に真相を見抜いてしまうのではないでしょうか? そこに挑戦したのが本書です。果たして、この挑戦は無謀なのでしょうか? そうでもないのでしょうか? その答えは、皆様が本書の事件を解き明かせるかどうか、で決まります。
叙述トリック短編集 著:似鳥鶏
本編内の読者への挑戦状より抜粋
短編集であり、どの作品にも共通の登場人物が登場しています。
本の構成(約300ページ)
目次
読者への挑戦状
ちゃんと流す神様
背中合わせの恋人
閉じられた三人と二人
なんとなく買った本の結末
貧乏荘怪事件
ニッポンを背負うこけし
あとがき
読者への挑戦状
その名の通り、読書への説明や読むにあたってのヒントが書いてあります。初めて読む人でも読書が同じスタートラインに立てるように、端的に簡潔に記されています。
ちゃんと流す神様
ある株式会社セブンティーンズのトイレが詰まり、業者をよんでもいないのに、なぜか詰まりが解消された事件。
登場人物が様々な人に問いかけ、誰が善意で処理してくれたか不明だが、解決パートを読むと「やられた」感を味わえる。短編集のはじまりとして後の短編にも期待が高まる作品。
背中合わせの恋人
ブログの写真を気に入り、SNSを通じ、名前を知っているが顔は知らない「平松詩織」に恋心を抱く大学生「堀木光」。ある出来事をきっかけに一目惚れに近い恋をした名前は知らないけど、顔は知っている同じ大学内の学生に恋をした「平松詩織」。
そんな二人の視点を通して語られ、The 叙述トリックという作品で好きです。甘酸っぱい作品です。青春です。
閉じられた三人と二人
密室です。雪山+密室=殺人事件の反応式なほど定番モノになっています。人里離れた山荘に強盗が押し入り、前から山荘にいた2人と強盗4人の内一人の強盗が突然亡くなることから事件が開始する。個人的に本作品の中でも一、二を争うほど好きな短編です。やられた感が強く、立ち読みやこの作品を紹介するときにはこれを薦めたいです。
雪山の山荘に強盗が押し入る作品なので、設定が似ている東野圭吾さんの「仮面山荘殺人事件」を思い出しました。自分で推理するのがとても楽しい作品の一つです。
なんとなく買った本の結末
探偵役のバー店主が従業員が読んだ推理小説の真相に答えられるかという物語の中、店主役と同じく、作中の推理小説を聞く作品になっています。ここでは先に犯人は判明しており、ハウダニット(どうやって)とホワイダニット(なぜ)が要求される作品です。
貧乏荘の怪事件
貧乏苦学生たちの貧乏荘の住人のあるモノが盗まれる事件です。貧乏荘に住んでいる人は人種のサラダボウルのように様々な人たちが住んでいます。そのため、登場人物たちも見慣れたかったり、読みにくい名前が多く出てきます。ロジックを突き詰めれば、しっかり読むと犯人が分かる作品です。作中の盗難品は登場人物たちと同じく、事件解決まではGoogle先生に聞かないようにしてください。
ニッポンを背負うこけし
オブジェやモニュメントを華麗に悪戯する「HEAD HUNTER」の魔の手から、ある地方駅に観光集客のための巨大なこけしを守る闘いの作品です。この短編集の中では、アクションシーンがあり、畳み掛けるように物語も進行し、犯人を捕まえるシーンは驚愕です。これかなと考えていたセンは当たっていたのですが、予想の斜め上だったので、悔しい作品でした。
作品紹介は以上になります。
あとがきも面白いので読んでみてください。本編設定裏話もでるので、是非最後に読んでみてください。
叙述トリック自体は綾辻行人さんの「十角館の殺人」やアガサクリスティーさんの「アクロイド殺し」が有名ですよね。どの作品にも叙述トリックは用いられることはありますが、騙されないようにして、騙されるあのやられた感を楽しむ作品だと思っているので、騙される感覚を味わえたので、とても良かったです。
ネタバレなし感想は内容に触れすぎてもダメ、触れないと薄くなるので、思ったより難しいですね。本編の約束は破らないように書けたので、個人的には満足です。