【感想】『大怪獣のあとしまつ』 公開初日に鑑賞した人間によるレポート(ネタバレあり)

「怪獣」とは映像作品で創作した、怪奇な巨大な動物。
そんな1900年代の日本で生まれた怪獣はゴジラやウルトラマンをはじめ、様々な作品が生まれてきた。そこに一石を投じたのが本作品である『大怪獣のあとしまつ』だ。
この作品は怪獣を倒すという王道でなく、怪獣が倒された後のお片付けにスポットが当てられている。

 

『シン・ゴジラ』では徹底的な省庁の仕組みや部屋の間取りをはじめリアリティが高く、「ゴジラ」という虚構をより現実に現れたらどうなるのかという作品への没入感を高めていた。現実味のある大臣や官僚の管轄争いや憲法の解釈により自衛隊を派遣させるといった人間社会はどう問題を処理するかについて深掘りをする作品なのだろうと予告映像から少なくとも僕は読み取っていた。

 

西田敏行をはじめ日本を代表する俳優が脇役を固めていることから、特撮に比較的触れていない一般層にも“視聴していて恥ずかしくない”という狙いも垣間見えたが故に、作品発表から実際の公開までに期待のハードルが上がっていた。

 

 


www.youtube.com

 

誰もが知る“巨大怪獣”の、誰も知らない“死んだ後”の物語

【INTRODUCTION】
暴れ狂う大怪獣に、逃げ惑う人々。
突如、ヒーローが現れて世界を救う―。
子供の頃に誰もが憧れた、お決まりの、お約束の展開。

しかし、倒された怪獣の死体処理は、
果たしてどうなっていたのか?
誰が、いつ何時、どんな方法で―。

前代未聞の緊急事態を前に立ち上がった、
ある男の“極秘ミッション”を巡る空想特撮エンターテイメントが、動き出す。

【作品概要】
■タイトル  : 『大怪獣のあとしまつ』
■監督・脚本 : 三木 聡
■出演    : 山田涼介 土屋太鳳
        濱田岳 眞島秀和 ふせえり
        六角精児 矢柴俊博 有薗芳記 SUMIRE 笠兼三 MEGUMI
        岩松了 田中要次 銀粉蝶 嶋田久作 笹野高史
        オダギリジョー 西田敏行      
■企画・配給 : 松竹 東映
■製作    : 「大怪獣のあとしまつ」製作委員会
■公式HP  : https://www.daikaijyu-atoshimatsu.jp/
■公式Twitter : https://twitter.com/daikaijyu_movie
■公式Instagram:https://www.instagram.com/daikaijyu_m...
■クレジット : (C)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会
■公開日   : 2022年2月4日(金) 全国ロードショー

#大怪獣のあとしまつ #山田涼介 #土屋太鳳 
#濱田岳 #オダギリジョー #西田敏行 #三木聡

引用元

映画『大怪獣のあとしまつ』本予告(60秒)2022年2月4日(金)全国ロードショー
松竹チャンネル/SHOCHIKUch
https://www.youtube.com/watch?v=B-mP3KydZ_4

 

公開初日に仕事を調整し、モチベーションを高め仕事を終えた後に見た人間による備忘録をここに記す。

 

以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

 

 

 

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つまらないとかでなく、ただ単に抑揚がない作品だった。
医療ドラマである心電図で例えるなら、最初から最後まで「ピー」という音が平行線と共に鳴り響いている。

タイトルに「大怪獣」とついてますよね。怪獣を扱い、一般ウケも狙っているのですよね。
なのになぜ名俳優たちを使って内輪ネタのような学芸会を見せられているのだろう。
今まで怪獣を扱った作品がやっていないことを料理することに関しては構わない。
ただ先人がやらなかったではなく、やってもつまらないことが分かっていること全てを継ぎ接ぎでつなげた化物を生み出してしまった。

 

感情の後始末に劇場の人たちの顔は何とも言えない表情をしていたことが僕は印象的に覚えてしまっている。
それはネットでも多くの「令和版デビルマン」や「大怪獣のあとしまつの後始末」とやらもはや見ていない人までもが乗っかってしまうほどに意見の集中砲火を浴びてしまっている。

 

参考記事
「大怪獣のあとしまつ」レビュー 見た後に怒りの後始末が必要な全方位にスベり散らす怪作ギャグ映画(1/3 ページ) - ねとらぼ

 

 


特にヤバいところは、終始徹底している寒いギャグのようなものだ。
怪獣の名前を「希望」と見せることに、「令和」元号を発表したシーンを尊敬も何もないパクリも寒気がした。
また、名俳優を使った感情がなにも振り回されないやり取りにだんだん心が凍死しかけたことを思い出す。
(制作側としては面白いと思っている。)
近隣国が日本の怪獣対策について断固抵抗するというスレスレのネタをやったら面白いだろうということ意図がみえみえで、しかもやたらに入れるシーン。そういうのは周りの設定や表現が成り立ってこそ、作品へのリアルもとい没入感や面白さを生み出すはずだ。

作品が特撮メインでなく、蓋を開けたらギャグテイストでしたらをやりたかったのだろうが、作品の肝となるギャグと言えない要素で埋め尽くされていたことに特撮に関心がない層も匙を投げたくなる。

 

特撮が好きな層としては、これやってればいいんだろうという投げやりな専門用語のやり取りや表面を撫でただけのような設定。
なんで土屋さんをあんな触れたらキノコ人間になる可能性や怪我をするような被害にヒールで現地に赴くのだ。鑑賞する人に疑問を抱かせる部分が多すぎて、作品そのものを斜に構えて見なければいけなくなる人も多いはずだ。

 

作中命名された「希望」の粘液や表皮の描写は「あ~怪獣だな」と思う部分もあった。しかし、それを扱う料理人が元々腐っていたからこそ高級食材を台無しにしてしまった。特にダムを爆発して「希望」というモンスターを水で押し流すシーンのちゃちさを感じてしまう引きの構図と演出には目をつぶりたくなってしまった。


加えて、かつて怪獣作品や特撮作品に出演されていた俳優が雑に扱われた作品に出ていることも悲しい。
『パシフィック・リム』に出演されていた菊池凛子さん、『仮面ライダークウガ』に出演されていたオダギリ・ジョーさん。彼らが特撮作品のそれもスクリーンで活躍される姿は嬉しい。ただこんな形で会いたくなかった。もちろん俳優の方々も台本や仕事として取り組む上で清濁併せ吞むところもあるのは重々分かっているが……

 

最後のシーンの山田涼介さん演じる主人公がいわゆる光の巨人(ウルトラマン)らしきものになるオチも、劇中の布石の置き方が雑に加えて、死んだ目で見なければいけない演出の数々に挟まれたら、ある程度展開が読めてしまう。そんな部分も感情の起伏がないことに繋がったと僕は考えている。
(最後のシーンの怪獣に穿孔して、「ガスを噴出する装備はあんなの3つじゃ」どう考えても無理だろうと勘ぐってしまうのも嫌だ。)


この作品を通じて、特撮ジャンルものってこんな感じなんだと普段触れる機会が少ない方に思われるのが非常に不愉快だ。
扱っているテーマというか着眼点は面白い。そこに関しては同意できよう。

今後何も特撮にあまり触れない層が、偉大な「怪獣」や「特撮」とそれを製作する企業と作品に変な色眼鏡を通される可能性が高まることに憤りを覚える。願わくば今後より、特撮や怪獣文化を含めて多様な作品で感情の上書きをして欲しい。

 

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